このような極限的な状況にある田舎の村々に、ジプシーかユダヤ人にしか見えない少年、という危険因子が紛れ込む、それによって起こる反応の様々を描いていくのが本書だ。

タイトルの「Painted Bird」というのは作中のエピソードから採られている。ある鳥の群れのなかから一匹を捕まえ、ペンキを塗りたくって群れに戻すと、群れの鳥たちは戻ってきた鳥を仲間とは見なさず、一方的に攻撃して殺してしまう。この「ペンキまみれの鳥」こそ、白い肌の人々のなかに紛れ込んだオリーブ色の肌の少年をしめす象徴的なタイトルでもある。

以上のことからも容易に推測できるように、東欧の村への少年の闖入は、まるで水にナトリウムをぶち込んだような劇的な反応を巻き起こす。少年は当然まともな扱いを受けられるわけがなく、かろうじて見つけた居候先で虐待まがいの暴力をふるわれるばかりか、彼という異分子が入り込むことで、村のなかでの緊張が高まり、暴力の嵐が吹き荒れて破滅を迎えるという展開がしばしば起こる。住民同士の喧嘩だけにとどまらず、人は刺され、撃たれ、建物は爆発炎上し、毎回のように村々には大きな傷を残して少年はさまよい続ける。その挙げ句、彼は失語に陥る。

どこへいっても異物として攻撃、排除される「ペンキまみれの鳥」たる少年の彷徨を描くなかで、彼にたいする人々のなかにある暴力のありようを、さまざまな形で描き出そうとしているのが本作だといえるだろう。ポーランドと名指ししてはいないものの、これが現地の人々にいい顔をされなかったのはその点理解できる部分はある。

こう書いていくときわめて暗鬱な印象を与えると思うのだけれど、彼が来たことで破滅を迎える村々の連続は、まるで悪趣味なコントのような軽さがあって、悪夢的、グロテスクなメルヘンのように感じる。どんなに破滅的な状況からも生還し、次々と村を変えていく展開の早さもその印象を強めている。

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